「で、俺にどうしろと?」
 不機嫌むき出しのまま、リッツはテーブルに頬杖を付いた。毎週末に繰り広げられる、いつもの談話室のいつもの光景が目の前にある。当然目の前に座っているのは、最愛のアンナ……ではなく、エドワードだ。
「そんなにむくれることもないだろう。私はただお前に、一緒に旅行に行かないかと誘っているだけなんだがな」
 いつもの調子で微笑みを絶やさずにエドワードはワイングラスを傾けた。
「それは分かった。俺は確かにお前と旅行に行くのは嫌いじゃない。むしろ楽しいし」
 素直にエドワードへ告げながら、ため息混じりにグラスを一気に飲み干した。色々な悩みやら苦悩やらが最近すっきりと片付いたから、エドワードに対しての気負いが最近徐々に消えてきているのだ。
「でも、何で……ガキ共をみんな引率せにゃならねえんだよ!」
 黒髪をかき回して呻くと、エドワードは平然と笑う。
「アンナやフランツはガキじゃないだろう?」
「ああそうだよ、じゃあ訂正するよ。何で俺がグレイグの休暇に付き合わされるのかって聞いてるんだよ!」
「違うぞリッツ。農民たちの苦労を知るためにと命じられたグレイグの休暇に付き添うように言われた私に付き添うんだ」
「同じだろうがよ!」
 怒鳴ると、エドワードがついっと身を乗り出してきた。そのまま至近距離からボソッと囁かれる。
「じゃあ何か? お前は俺がもう六十八だと知りつつも、十六の孫の面倒を見ろと?」
 つられてリッツもエドワードに顔を寄せる。
「たりめえだろう。つうかジェラルドとパティはどうしたんだよ? シャスタは? 別にケニーたちでもいいだろうが」
「あそこは王族の所有地だ。俺が行かねばどうにもならないだろうが」
「王族ならパティだっていいじゃんか。暇してんだろう?」
「いつも城にいないから、俺が適任だとパティに押しつけられた。幼い頃のグレイグの面倒を見なかったツケを払えとさ。たまには清々と王宮ライフを楽しみたいそうだ」
「お前の責任じゃん。お前とフランツでグレイグ連れて行けばいいじゃん」
「俺が忙しくて王宮にいられなかったのは誰の責任だ? 大体お前が大臣職を放りだして傭兵になったりするからだろうが。責任をとれ、責任を」
「今持ち出すか、それを!」
 つい大声を上げると、この場にいる全員の視線が集まった。特にグレイグの視線が冷たい。グレイグはエドワードを尊敬してやまないから、リッツがエドワードに対して横暴な口をきくと機嫌を損ねる。こんなに面倒くさい奴と1週間も一緒になんぞ、いたくもない。
「それに俺は、今月いっぱいでシアーズを発つんだぞ? シュジュンに行って期間限定傭兵に逆戻りだ。先週は軍学校のキャンプで、一週間山ごもり、ようやく晴れてアンナを毎晩、何度でも抱けるぞってすっげえ楽しみにしてたのに、明日から黎明館で農作業なんて、絶対嫌だからな!」
 断言すると、後ろから思い切り頭を殴られた。
「いって〜、何すんだよ、アンナ!」
「リ〜ッツ、そういうことは人前で口にしない約束じゃなかったっけ?」
「でもアンナ、俺、本気で我慢したんだぞ! キャンプの間は襲わなかっただろ!」
 力説するとアンナは真っ赤になる。
「でも襲おうとしたでしょ!」
「あ、うん、まぁ……未遂だよな?」
 そういえばどうしても我慢ができなくて、夜間二人きりで生徒を捜している最中に、森の中で押し倒して、小型の水竜に絞め殺されそうになったことを思い出す。
「野外でするのは嫌だって言ったでしょ! 未遂でも何でも約束破ったんだから、偉そうな口聞かない!」
 あまりの迫力に、リッツはテーブルに両手を付いて頭を下げた。
「ご、ごめん……」
 アンナに対しては土下座ばかりしているような気がするが、気のせいだろうか?
「それに親友の頼みなのに、どうしてそんなに無碍にできるの? エドさんのこと私ぐらいには大好きなのに」
 ため息混じりで言われて、反射的に反論する。
「だから、お前とエドを同一線上に置くな!」
「友達は大事なの! 私はリッツを愛してるけど、ジョーのお願いはちゃんと聞きたいもん」
 きっぱりと言い切ったアンナの言葉に、恨めしくジョーを見ると、ジョーが微妙な笑顔を浮かべた。きっとこちらにお鉢が回ってきては堪らないとでも思っているのだろう。
「でもアンナ……」
 最後の抵抗を試みるが、アンナはあっさりと言い切る。
「私とリッツは長生きなんだから、ちゃんと友達を大事にしなさい。ね?」
 アンナはにっこりと無敵の微笑みを浮かべた。純粋で本当に本気でそう考えているのは確実だ。そうなるとリッツには反論のしようがない。
「分かった。エド……」
「何だ?」
 リッツとアンナのやりとりを楽しげに見ていたエドワードに、ため息混じりに告げる。
「付き合うよ黎明館。その代わり、一つだけ条件がある」
「ああ、何だ?」
 軽く答えたエドワードに、リッツはきっぱりと言い放つ。
「俺とお前の立場は完全に同位だ。俺とエドは友達だ。国王と臣下じゃない。それをちゃんとグレイグに納得させといてくれ。俺とお前が口論する度にグレイグに睨まれるのは正直腹立たしい」
 言い切ると、今度はこちらを不機嫌そうに見ていたグレイグをにらみ返す。
「お前にとってはエドは最高に尊敬できる対象かもしれんが、俺に取っちゃ友達以外の何もんでもないからな」
「ふん。お祖父様とは全く格が違うようにしか見えないさ。リッツは鏡を見たことすらないんだな。それともその目は完全に節穴なのかい? おっと、剣士の目に節穴は悪かったかな」
 グレイグに舌を出された。昔はもう少しかわいげがあったような気がするが、さすがに声変わりもして十六ともなると、生意気盛りだ。
 しかも体格も昔から比べて格段に大きくなっている。身長などはもう、フランツを抜いて、エドワードに近い。その上剣を振り回しているせいか、身体もできている。
 並んで立つと、フランツはいかにも政務官といった感じで、グレイグは見るからに軍人だ。
「こんのクソガキ〜」
「リッツの方がよほどガキだな。お祖父様と同列に並びたいなら落ち着いたらどうだ」
 思い切り鼻で笑われる。
「……エド、俺やっぱ行かない」
 思い切り不機嫌になってむくれると、エドワードが苦笑した。 
「そういうなよ、リッツ」
「お前は良いだろうが、俺は嫌だ。貴重な時間を何でこんな奴に割いてやらねえとならないんだよ。アンナ、部屋に行こうぜ」
 乱暴に椅子から立ち上がり、近くにいたアンナを片腕で抱き寄せる。
「ちょっと、リッツ!」
 焦るアンナを見ながら、エドワードは苦笑した。
「分かった分かった。グレイグの態度を改めてやればいいんだな」
 まるで子供を納得させるかのようにエドワードは立ち上がる。
「グレイグ」
「何でしょう、お祖父様」
 リッツの時とは対照的に、素直に応じるグレイグに、エドワードがゆっくりと腕を組みながら微笑む。
「お前にとってのフランツは、お前よりも格下か?」
 きっぱりとした問いかけに、グレイグが詰まった。グレイグの目が恐る恐るフランツを見る。フランツが今読んでいる本を静かに捲った。紙を捲る音だけが、妙に大きく響く。
 本に目を落としたきり、この騒ぎに全く動じることのないフランツの表情は、銀縁眼鏡越しに隠されていて全く分からない。
「格下だと思ったことは……」
 ぼそぼそとグレイグが呟く。フランツがグレイグの友として王都に帰ってきてから二年半。フランツは友としてのグレイグに、静かな親愛の情を持ちつつも、きっぱりと厳しい態度を取っている。
 グレイグの性格は相変わらずだが、フランツはどうしても見かねるところがあると、王族であるグレイグを対等な立場から平気で叱り飛ばす。
 その正論っぷりに太刀打ちできないグレイグが一度、『俺は王族なんだぞ! そんな態度ばかり取って良いのか!』と感情的に言ってしまったことがあるらしい。グレイグがそんなことを言ったのは、フランツが友としてグレイグに望まれてから、初めての事だった。
 その時フランツは静かに怒りを堪え、きっぱりと立て板に水とばかりに感情のこもらない声で、すらすらと持論を語ったそうだ。
『君が僕を友にと望んだ。君が愚かにも君を持ち上げる人間を心地よいと感じてそばに置きたいのなら、今すぐここで僕を王宮に出入り禁止にして貰おう。友である今は君を大切に思っているから意見するし、君のためを思えばこそ怒るが、君が解消したいというのなら友の立場は今すぐここで返上し、一政務官として、君の元に跪く』
 そう言いながらフランツは真っ直ぐに、あの燃えるような青い目でグレイグを見据え、あろうことかその場に跪き、胸に右手を当てて、臣下としての最敬礼をしたのだ。
『殿下が何をなさろうと、如何なる愚を犯そうと、私はユリスラ王家の一臣下であり、一政務官として、淡々と従って見せましょう。例えそれが国を滅ぼすことであっても、忠告も進言もいたしません。私は友ではなく臣下なのですから。それでよろしいのなら、今すぐ私に王宮への出入りを禁じると御命じください、グレイグ王太子殿下』
 当然フランツはその場で命じられれば、即座に一臣下となり、友としてのグレイグを完全に見捨てる気だったらしい。初めてフランツに本気で怒りをぶつけられたグレイグは慌てた。
 今までのフランツはグレイグの我が儘に渋々従い、苦情をいい、諫めて来ただけだったが、フランツにとってその物言いだけは絶対に許せないことだったらしい。
『王太子殿下、お言葉を』
 あくまでもその態度を貫くフランツに、グレイグは半ばパニックに陥った。その時に初めてグレイグは、フランツが本気でグレイグを見限ろうとしていることを理解したのだ。
 我が儘な自分を持ち上げる高官や貴族の息子、息女は周りに沢山いる。彼らと適当に距離を置きながらも遊ぶことも多い。でも本気で信用する友は目の前に膝を付き、身動き一つせず、静かに最敬礼をしているフランツだけしかいなかった。
 その友が自分を見捨てて一政務官になるというのだ。そうなればこのフランツは、二度とグレイグの元に来てくれることがないことなど、火を見るよりも明らかだ。フランツは決して冗談を言わないし、自分で決めたことを覆しはしない。
 つまりこの選択を誤ると、フランツを失う。そこでグレイグがしたことは、あまりにも子供だった。膝を付いたまま微動だにしないフランツに、取りすがったのだそうだ。
『ごめんフランツ! 俺が馬鹿だった。フランツは友達だ、俺のたった一人の友達だよ! 頼むから、さっきの一言は忘れてくれ!』
 そういってフランツを揺さぶったグレイグだったが、しばらくフランツはそれを許さなかったらしい。その後に静かに無表情で見上げて『ご命令とあれば、王太子殿下』といわれた時には、グレイグは半泣きだったそうだ。
 その一部始終を偶然見ていたジェラルドが、後日リッツに笑いながら話してくれた。ジェラルド曰く『フランツがグレイグからこの国を奪おうと思ったら、あっさりとユリスラ全土を手にできるよ』だそうだ。当然フランツにそんな気は毛頭無いだろう。
 どちらかと言えば金が貯まれば政務官ともお別れして、大陸間ネットワークを立ち上げたいと思っているのだから。
 それにリッツはグレイグがフランツに対してどんな感情を抱いているかをちゃんと知っている。目を泳がせるグレイグに声をかけたのは、本から目を上げないフランツだった。
「格下でも構いませんよ、殿下。僕は一臣下である方が好ましい」
「フランツ! 違いますお祖父様、俺とフランツは同格です格上も下もありません……」
 尻つぼみに声を落とすグレイグに、フランツがため息をついてようやく本から顔を上げた。近くにあったテーブルから皮の栞を取り出して本に挟む。
「つまり陛下にとってのリッツは、君にとっての僕だ。君がもし僕と共にいて、他の人に僕をけなされたら嬉しいかい? 僕が君なら愉快ではない。まあ、僕は親王殿下の腰巾着らしいからそんな状況にも慣れてるけどね」
 フランツはそういうと、小さくため息をつき、長くなった前髪を掻き上げた。最近のフランツは、見習いの政務官として働き始めたのだが、そこでそういう扱いを受けているのは全員が知っていた。だがフランツはそんな扱いを受けようと全く動じない。だから最近は鉄面皮などと、陰口を叩かれているようだ。
 だがフランツ曰く、サラディオの自分や、シーデナのリッツに比べればまだましだろうということになるらしい。旅路での経験は、フランツを何事にも動じない信念の男へと変えたようだ。
「君は僕がけなされたら嬉しいかい、グレイグ?」
 淡々とそういうと、グレイグが首を振った。
「嫌だ。今でさえ……苦しいさ」
「そう。じゃあ結論は言わずとも分かるね」
「ああ」
 フランツはグレイグの答えに小さく頷くと、アンナとリッツに微かに視線を向けてきた。もう五年の付き合いだ、言いたいことは何となく分かる。アンナを軽く突くと、アンナが頷いた。
「つまり、みんな仲良く、喧嘩をしないで行こうって事だよ。ね、グレイグ?」
 いつもながらのアンナの言葉に、緊張した空気がほぐれる。
「悪かったよリッツ……」
 目線を合わせずに、でもちゃんと詫びてきたグレイグに、肩をすくめて笑う。
「わかりゃあいい。これで契約成立だな」
 肩をすくめてエドワードを見ると、楽しげに笑っていた。そんなエドワードにリッツは心の中だけで告げる。本当は俺はお前よりも格下なんだよ。でもお前が引き上げてくれるから、共に歩めるんだ。
「どうかしたか、リッツ?」
 エドワードに問いかけられて、微笑み返す。
「べっつに」
「そうか」
 笑いながらエドワードが後ろからリッツの肩に両手を置いた。若い四人がそれぞれに話し始め、こちらへの注意が逸らされたのを確認してから、耳元に囁いてくる。
「夜中でいいから時間を貸せ」
 誰にも聞こえないような囁きに、リッツは渋々頷く。どうやらエドワードは何かを企んでいるようだ。仕方ない。リッツにとって最愛の人はアンナであっても、今もエドワードは大切な人なのだ。
 アンナとフランツ、ジョーの三人に二人の出会いから、内戦、そして別離までの昔語りをしてきて、それは本当に身に染みた。
 三十五年の別離から、何だか微妙にエドワードに自分をさらけ出すことができず、妙にたてついてしまっていたのだが、結局どう気張ってみても、リッツに取ってのエドワードは、自分以上に大切な存在に他ならなかった。
 だから断る事なんてできはしないことぐらい、自分でも分かっている。しかもリッツの性格を完全に読み切り、夜中でいいときた。つまりは……アンナとこれからの時間を過ごすぐらいの時間の猶予をくれるらしい。
 こうなればできるだけ早くアンナと寝室へ引っ込んで、なるべく長い時間を一緒に過ごしたい。
「さ、フランツ、ジョー、グレイグ、明日朝一で馬車で発つからな、忘れ物がないようにしとけよ」
「了解!」
 全員の声が重なる。なんだかんだ言っても、このメンツで出かけるのは初めてだから、何となく全員が楽しみなのだろう。グレイグとエドワードも本日はクレイトン邸に泊まりだ。
「それから、アンナ」
「なあに?」
 可愛らしく首を傾げたアンナに、にっこりと微笑みかける。
「この後、俺の部屋に来るよな。また一週間潰れるんだから、すっぽかすなよ?」
 アンナ以外の呆れた視線にさらされながらも、リッツは真っ直ぐにアンナを見つめる。顔を赤くしながらも、アンナはこくりと頷いた。
「支度はもうしたから……大丈夫だよ」
 顔を上げたアンナは、恥ずかしそうな、でも幸せそうな笑みを浮かべている。
「おしっ!」
 愛されてるなぁと実感して、思い切り拳を握りしめてしまった。
 うん、愛されている。
 この感覚はなんて心地いいんだろう。
 アンナを抱くまで、どうしてもアンナが自分をずっと好きでいてくれる自信を持てずにいたのだが、ここに来てようやくリッツは、アンナがずっと自分を愛してくれるという実感を持てるようになった。
「でも……明日早いから、ちゃんと寝かせてね?」
「当然。ちゃんと睡眠時間を考えるよ」
「それなら……いいよ」
 頬を染めるアンナが可愛くて仕方ない。確かに明日は早いから、ちゃんと睡眠時間は考えるつもりだ。それ以上にアンナをくたくたに疲れさせて、夜中にこっそり部屋を出なければいけないという状況にもなってしまった。
 リッツは真っ赤になっているアンナを攫うように抱き上げた。
「え、ちょっと、リッツ!」
「半日かかるから、アニー、弁当を人数分頼むよ」
『分かったわ』
 今まで気配さえなかった談話室に、にじみ出るようにアニーが現れる。まだ幽霊に慣れないグレイグがのけぞった。
「ゆ、ゆ、幽霊のメイド……」
 グレイグもそれほど超常現象が得意な方ではないらしい。こういう所は普通の少年らしくていいが。
『他に何かあるかしら?』
「う〜ん。ま、行き先は黎明館だ。酒もあるし食料もある。特に必要ないだろう?」
『じゃあ、特別に美味しい朝食を用意しますわ』
「よろしく〜」
 抱き上げた腕の中のアンナの体温が、少しづつ上がっていくのを感じながらも、平然と全員を見渡す。
「明日食堂集合な。朝食は七時、出発は八時でどうだ、エド?」
「いいんじゃないか?」
「だよな? じゃあとはエドに任せるわ。お休み〜」
 悠々とアンナを抱えて談話室を出る。二人きりになってから、腕の中でもがくアンナの唇を深く塞ぎ、甘く舌を絡ませる。とたんにアンナは大人しくなり、甘えるように返してくれた。
 身体を重ねるようになって四ヶ月ほどになるが、未だにアンナを抱く時は、愛おしさでおかしくなってしまう。昔は純粋無垢だったアンナもちゃんとリッツを欲しがってくれる。
 こんな幸福はそうそうない。
「愛してる。時間は短いけど、たっぷり可愛がってやるからな」
 耳元で甘く囁くと、両腕をリッツの首に回してきたアンナの甘い声が返ってきた。
「……うん……ちゃんと愛して……ね?」
 駄目だ。ものすごく幸せだ。
 本当にこれで今月いっぱい一緒に過ごしたら、傭兵としてシュジュンに戻れるんだろうか。当日になったら『行きたくないよう』とだだをこねるガキ丸出しの自分になっていたらどうしよう。不安だ。
 リッツは自室へと階段を上りながら、こっそりとアンナに気付かれないようにため息をついた。
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